今振り返って僕がカメラ人生を本気でスタートしたのはこの日の撮影からだ。
いつもお世話になっている方の地元へ出掛けたときの撮影。
今思えばカメラのことなんてまるっきり分かっていない頃の経験と思い出。ストロボだってまともに使えこなせていない。そんな当時のこと。
この日、港には地元の子供たちとその家族が集まっていた。港でバーベキューをやる予定で、みんなそれを楽しみに集まっていたんだ。
漁師達は、手慣れた手付きで獲れたばかりの新鮮な魚を捌き、まわりは墨を燃やし網に具を乗せ、具を焼きながら仲間や家族と喉を潤していた。
ただそれぞれの風景。
ただそれだけの出来事。
なのに僕にはたまらなかった。
子供たちの澄み切った眩しいばかりの眼差し。
その子供たちをみる親たちの笑顔とその奥に滲む生きる喜びと苦悩。
ずっと忘れていた僕に衝撃的に映り新鮮で突き刺さったんだ。
僕にも子供のころからみてきた景色があり、親がこれまでどんな思いで自分を育ててきたのか?重々承知していたつもりだし、常にそれらを意識して言葉にして人に僕の人間性だったり価値感を伝えていた。そう僕はルールや価値感として備えていたはずなのに。。。
魚を捌く漁師。
ここには沢山の命が刻み込まれている。
僕たちが生きるために命を捧げた魚の命。
漁師の潮で焼け厚くて深いシワだらけの拳には、仲間と家族の命を支えている彼自身の命がずっしりとのしかかっていた。
写真ってすごい。カメラってすんげー。
僕はこの日、写真で伝えたいものを発見したんだ。
日本だけじゃなく世界中に同じように命がある。
人だけじゃなく動物にも昆虫にも草花にも言葉にも声にもならない命がある。
僕の写真でそれらを届けていく。写真が語るように。
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